コラム

橋本の「サラの柔らかな香車」文庫版が重版になりました

橋本のデビュー作「サラの柔らかな香車」の文庫版が先月重版になりました。

遅ればせながら、藤井聡太四段ブームが橋本の著作まで波及したらしいとのことです。
将棋小説としても、爽やかな青春小説としても読むことができますので、この機会に手にとってみてください。


「サラの柔らかな香車」「サラは銀の涙を探しに」を書いてからそんなに時間が経ってはいないのですが、将棋界における主流戦法には大きな変化が見られました。
横歩取りの主流戦法は「サラの柔らかな香車」内では中座流(△85飛車戦法)でしたが、現代横歩取りで戦われているのはあの頃とは別の何か――と言っていいほど違った形です。
矢倉においては、雁木戦法が主流戦法の座につくなんてことは考えられませんでした。アマチュアの奇襲戦法か、江戸時代によく指されていた戦法というぐらいの扱いでしたからね。
その他にも戦法・戦術革命があったわけですが、これらの発祥元はほぼ全てコンピュータ将棋の研究によるもの――というのも驚きの事実です。
「サラの柔らかな香車」の続編の「サラは銀の涙を探しに」においては、コンピュータ将棋と将棋界を一つのテーマに描いています。
コンピュータ将棋の登場によって将棋界はどう変わるのだろう? というような話です。不思議なことに、今私が感じているのは「将棋が前より面白くなった!」ということなんですよね。プロ棋士やアマ達がコンピュータ将棋の戦術を参考に研究を始めてから、将棋の自由度が一気に増したように感じるのです。「えっ!」こんな攻めあるの?っていうか成立するの?というような手がプロ将棋でも多く見られるようになりました。

最近の驚きの仕掛けは下図。

gps_l vs. yaselmo_note1t wdoor+floodgate-300-10F)(将棋DB2

以下▲同歩△86歩▲同歩に△77角成!となり、8筋を突破して後手優勢。冷静に考えると人間の研究でもでてきそうですが、この筋はなかなかうまくいかないという思い込みがあるのでなかなか突っ込んで考えようとは思いません。これは単純な例ですけど、以前まで駄目だと思われていた形がコンピュータ研究によって復活を遂げるというようなことが増えてきているのだと思います。
そして、コンピュータによる将棋研究が開く世界は「アマチュアとプロの差がなくなっていく」という事態でしょう。プロとアマの間には棋力差以外にも情報差、研究環境差がありましたが、コンピュータ将棋の登場でそれらが埋まります。また、効率的な学習が可能になることで思わぬところから、思いもよらない才能が出てくる可能性も高まっています。
藤井四段の今後の活躍とともに、まだまだ将棋からは目が離せないですね。

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